不思議なお魚パティとラフィーネ 第42話 神さまと呼ばれた人    2015.03.11s

 
第42話の仲間たち
パティの家族構成 お母さん:ミーユ   お父さん:マルーロ
長女  :ラフィーネ  次女 :パティ   長男:マーロ
パティ31年前の思い出の小学生
お母さん ミーユパティに名前をつけてくれた、とっても優しくて素敵なお姉さん
神さま困っている時助けてくれた人
チョウチョさん仲良しのけんちゃん
小鳥さん広場へ遊びに来る小鳥さん。ぼんてんといいます
アリさん広場が大好きなアリンコさん
バッタさんアリさんたちの遊び仲間でグーリーといいます
てんとう虫さんなおなおといいます。
エンジェルyukiさまAngelさん 天使のようにやさしい人 高知市にお住まい


困っている人に手をさしのべる 神さまと呼ばれた人


神さまと呼ばれた人

神さまは心の中にお住まいです
あなたにも あなたにも……


とても思いやりのある人
広い心で包み込んでくれる人


大きな恩を受けた人
私は神さまと呼んでいる


ある年の暮れ、イチョウさんが風に乗ってやってきた。
イチョウさんは、手紙を届けにきてくれたのだ。
神さまの奥さまからの、お便りでした。


いちょうの葉っぱ

 不安がよぎる……
 ご主人が天使の国へ、旅立ったことを、知らせる内容であった。



 神さまとの出会いについ、て少しふれてみましょう。
 遠いふる里の村にいる、母に会うため田舎へ行っていました。


母

 村から戻る時、お金もカードも持たずに出てしまった。
 母の家へ置いたままだと、まったく気が付かなかった。


 車で何時間も走り松山へ到着。ガソリンが少なくなっていたのでスタンドへ寄った。
 あれっ! お金がない。カードもない。ポケットをあちこち探したが……どこにもない!

「ごめん 油は入れません。すみません」そういってひとまず出る。
 帰れない。ドキッドキッ 胸がはげしくときめいている。


 朝からのことを、思い浮かべながら考えてみると、田舎へ忘れていることに気付く。
 たしか引出しへ入れた。そのことを思い出した。


 広島までのフェリー代もない。どうすればいいんだろう。困ったなあ。
 途方にくれているとき、助けてくれた人がいました。
 それが神さまとの出会いです。


「パティ 神さまが天国へ旅立ったようですよ」ミーユがいいました。
「えっ 松山の神さまですか? 父さんが助けてもらった」


パティの家族
パティの家族


「ええ あの方です。父さんがお金を忘れて困っている時、貸してくれた方です」
「覚えているよ。父さんは次の日曜日、お金を返しに行ったよ」

「パティも一緒に行きましたよね。近所の仲良しさんもいしょに……」


「そうそう チョウチョのケンちゃんね」 
 船に乗って松山の港まで行って、
 電車に乗りかえて、お城のところでおりたの。
 お礼に、もみじまんじゅうも持って行ったよ」

 パティは思い出しながらいいました。


 すると天のほうから、エンジェルyukiさまの声が聞こえてきました。
「パティ あちらを見てごらん。その時のようすが見えますよ」


エンジェルyukiさま
エンジェルyukiさま

「yukiさま 見せて下さいますか?」パティがいいました。
「ええ いま魔法をかけてあげます。しっかり見て下さい」

 yukiさまが両手を広げると、手のひらに花びらが舞いおりてきました。

はなびら

 花びらにそーと息を吹きかけながら、両手を大きくゆっくり広げると
 花びらがひとつひとつ舞い上がり、大きなリングになりました。

はなびらリング

「パティ リングの向こうをよーく見てごらん」yukiさまがいいました。

 パティがリングの向こうに目をやると……

神さまのお店

 神さまのお店という、カンバンのかかっているお店の中で
 カメラと時計をさし出して、必死にお願いしている父さんの姿が見えました。

カメラ


「ご主人、私は母のいる村へ帰省していて、広島へもどるところです。
 お金もカードも、母の家へ忘れたまま、ここまで帰ってきました。
 フェリーに乗ることも出来ません。

 免許証も忘れたので、身分を証明するものは何も持っていません。
 今、おあずけできる物は、カメラと時計しかありません。
 これで、フェリー代を貸していただけませんでしょうか?」


 頭を下げながら、広島へもどる途中であることを必死に話しています。
 悲しくなるほど、困っているようすが顔に出ています。
 何度も何度も頭を下げて、お願いしています。

 はじめは、うたがうような顔をしていたご主人。
 無理もありません。どこの誰かも分からないのですから……


 するとご主人が、おだやかな顔をしていいました。
「いくらあれば帰れますか?」

「はい フェリーとガソリン代で8,000円あれば帰れます」
 そう答えるとご主人は、カメラを持って奥の方へ入って行きました。

 しばらくするとお金を持って出てきて
「これで帰れますか?」とやさしい顔をしていいました。


「はい 帰れます。これでじゅうぶんです」と答え
 住所と名前を書いてお金を受け取りました。


「ありがとうございます。ありがとうございます。
 ご主人が神さまに見えます。このご恩は決して忘れません」

 深々と頭を下げ、何度もお礼をいっている目には、涙がうるんでいます。
 玄関を出たあとも、家に向かって深々と頭を下げ、感謝しています。

 そしてもう一度
「ありがとうございます。このご恩は忘れません。必ず返しにきます」
 そういうと、フェリー乗り場へ急ぐ姿がありました。


 船の中には、あたたかい心にふれ、帰ることが出来るうれしさに
 あふれ出る涙をこらえることが出来ない、父さんの姿がありました。

フェリー  父の涙


 こうして神さまのおかげで、ぶじに家まで帰ることができたのでした。


 次の日曜日がきました。

 おかりしたお金を返しに行く日です。
 フェリーで松山港へ行き、港から電車に乗り、お城の見える所まで行きます。
 そこは、神さまのお住まいがある所です。



 パティと仲良しの、チョウチョのケンちゃんもいっしょ。
 港へ行く途中の広場で、小鳥とバッタとアリさんにてんとう虫さんに会いました。

 チョウチョ 小鳥  バッタ ありさん  てんとう虫

「パティ どこへ行くの?」アリさんがいいました。
「船に乗って遠くまで行ってくるの……」


「私も行きたいなあ」 「ぼくも」 「私もー」広場の仲間がいいました。
「いいわよ みんなで行きましょう」

 あそび仲間のみんなも船に乗りました。

フェリー

 パティも仲間たちも、船の旅におお喜びです。
 広―い海をながめながらの、楽しい旅になりました。



 やがて、神さまのお家へ着きました。

「こんにちは。  ご主人、あの時は助けて頂いてありがとうございました。
 おかげで、ぶじに家まで帰り着くことができました。
 なんとお礼をいえば良いか分かりませんが、今日はおかりしたお金を返しにきました。
 私にはご主人が、神さまに見えます。
 お世話になりました。ありがとうございました」

 父さんはあの時のお礼をいい、お金を返しておみやげをわたしました。

もみじまんじゅう

「それは良かったです。
 あまりに一生懸命な姿に、この人はウソをいってはいないと感じました。
 少しでも役に立ててうれしいです。 誰か困っている人に出会った時は、
 あの日のことを思い出して、手を差しのべてやって下さい。
 そうすると、その人がまた誰かを助けてくれます。
 こうして思いやりの心のつながりが、広がって行くと思います」


「はい わかりました。神さまから教わったその心は、決して忘れません」
 こうしてお礼をいうと、再び船に乗り戻ってきました。


 その後も、神さまの所を通過する時は、おみやげを持って家の前まで行きました。
 通過する時間はいつも深夜になるので、玄関にぶら下げておきました。
 ぶら下げられた袋には、こんなメモ書きが添えられていました。


「神さま、あの時は助けて頂きありがとうございました……」



 その……神さまと呼ばれた人も、天使の国へのぼっていきました。


  お わ り