不思議なお魚パティとラフィーネ 第18話 あの星のかなたに……   2003.02.10

 
第18話の仲間たち
パティの家族構成 お母さん:ミーユ   お父さん:マルーロ
長女  :ラフィーネ  次女 :パティ   長男:マーロ
パティ31年前の思い出の小学生
お母さん ミーユパティに名前をつけてくれた、とっても優しくて素敵なお姉さん
うさぎのリウ急に遠いところへ行った人
お父さんリウのお父さん
お母さんリウのお母さん
キララキラキラ星のお星さま
アリンコさん広場にいるパティの友達
花ビラ不思議なことを起こす花びらの精
エンジェル天使の保育園のエンジェルたち
ミヨ先生天使の保育園の先生
エンジェルyukiさまAngelさん   天使のようにやさしい人


急に遠くへ行ってしまった人がいます。あの星の向こうまで……



 パティのお父さんが、大変お世話になった方の子供さんが
 突然遠いところへ行ってしまった、という知らせがありました。


リウ
リウ

リウ天使


 それは2002年ももうあと4、5日で過ぎようとしている時でした。
 前日までとても元気な様子でしたのに……なぜ……


 名前をリウさまといいます。
 リウのお父さんはずーと昔……そう30年くらい前になりましょうか。
 パティのお父さんがお世話になった方です。


「パティ、お別れ会に父さんの変わりにいきましょう」ミーユがいいました。
「父さんがお世話なったのよ」
「はいそうしようと思ってました。母さん」


 お別れ会の席ではリウのお父さんが出迎えてくれました。


「この度はごしゅう………………」
「………… きてくれたのか…………」


「はい 父さんの変わりに……」
「すまないな 暮れだというのに……」
「いいえ とんでもございません」

ミーユたち

 リウのお父さんの瞳が涙でうるんでいます。
 多くを語らぬとも、その瞳を見ると心の内が伝わってきます。
 お母さんも悲しみでいっぱいのようすです。


 人にはみな運命がありますが
 このことを受け入れられるまでには、長い長い時間が必要です。


 今日は帰って来るか…………  明日は帰ってくるか…………
 心の中でそう思いながら、また新しい朝を迎えます。
「玄関をあけると、ただいま、と言って立っていないか……」と期待する日々


 何年たってもそんな思いが誰の心の中にもあるものです。
 大切なものを失った人は皆、同じ思いでいることでしょう。


 あの空の向こうに光っているあの星が……リウかも知れません。
 大きく輝いているあの星が…………キラキラ輝くキラキラ星
 あの星のかなたに…………リウがいる。そう思いたいものです


 お父さんの目を見ていると、涙でぬれた瞳の奥に、リウとの思い出が浮かんでいます。
 大切な思い出の中を少しだけ覗かせていただきました。


星
星



 左にお母さん、真中にリウ、右にお父さんが手をひいています。
 お父さんは、車の通る側を歩き、リウとお母さんを守っているんです。
 しばらく歩いて行くと、広場に出ました。


花園


「着いたよ リウ 今日は天使の花園みたいだなあ……」
「うわー きれいね。走ってもいい?」
「いいよ ここなら転んでも大丈夫……」


 いつもより沢山の花が咲き、小鳥や動物や昆虫たちがいます。
 あれーー アリンコさんは長い長い行列です。
 アリンコさんの道だね。


アリンコアリンコアリンコアリンコアリンコ アリンコアリンコアリンコアリンコアリンコアリンコアリンコアリンコアリンコ バッタ

「リウ 踏まないように気をつけて……」お母さんの声


「うん 大丈夫。 ほーーれ 飛んじゃうから……」 ピョーーン


「アリンコさん むこうに何か美味しいものがあるの?」
「そうだよ むこうに行くとあるんだ、皆んなで運ぶのさ……」


うさぎアリンコ


「そうか みんな集まると大きなものでも運べるね」
「運んできたらリウにもあげますね」


「わーーい うれしいな♪」
「もう行くから、リウ ケガしないように遊ぶんだよ」
        アリンコさんの心遣いです。
「うん ありがとう」


 お母さんは虫たちより、お花がいいみたいです。
 広場にはいろんなお花が咲いています。
 沢山ある花とお母さんはお話ししています。


天使のコスモス 天使のコスモスお母さん


「お母さん こんにちは」お花が声かけました。

「こんにちは お花さん。
 今日も遊ばせてくださいね。
 お花を踏んだり折ったりしませんから」


「いつも 気を使って頂いてありがとうございます。
 お母さん あれあれ リウを見てー ずいぶん楽しそうよ」


「お母さーん」 リウが呼んでいます。
 振りかえってみるとブランコしています。


ブランコ


「ギーーーコ ギーーーコ」  「ギーーーコ ギーーーコ」
 お父さんが後ろから押してあげていますね。


「わーーい 高ーいだろうーー」 「すごいねーー」


 家族のほのぼのとした光景が、お父さんの瞳を通じて見えています。
 許されるものなら、このまま時間を止めてしまいたいものです。
 お父さんの目からこぼれて落ちた涙とともに、思い出も見えなくなりました。


涙


「パテイや ちょっと使いに行ってきておくれ」
「はい 母さん」


「ラフィーネもね。おねがい」
「はい」


パティ
パティ
ラフィーネ
ラフィーネ
ミーユ
   ミーユ


「天使さまのところへ行ってくるんでしょう。母さん」
「そうだよ。わかってるね」


「ええ」
 そういうとパティとラフィーネは天に向かいました。


「天使さまー 天使さまー エンジェルyukiさまー」
「パティ いらっしゃい」


「天使さま 最近こちらにきた方がいるでしょう」

「いますよ。 キララがついてみています。
 たしかリウと言いましたよ」


天使さま  キララ
エンジェルyukiさま     キララ

「あっ そうです。 その方です」


「キララ リウはどうですか?」

「はい 天使さま とても疲れているようすです。
 働きすぎなのよ。今はゆっくりお休みです。
 起こしましょうか?」


「いいえ そのままにしてあげて…………
 疲れが取れれば起きるでしょうから……
 ここなら、心も体もリラックスできますからね。
 体の中の悪いものは全部流してあげましょう」


「はい」


 天使の畑では天使保育園のエンジェルたちが、おゆうぎしています。
 先生はミヨ先生だ♪ パティとラフィーネも仲間に入りました。


天使の畑


 エンジェルたちはやがてリウの周りで、天使の舞いをはじめました。
 リウの体は輝く光に包まれ不思議な不思議な光景です。
 リウの体から、悪いものが一つ一つ出て星になって飛んで行きます。


リウ天への舞


 するとリウがゆっくりと目をあけました。

「天使さまー リウが目を覚ましましたよ」キララの声がします。


「リウさん リウさん 疲れはとれましたか?」
「はい 何だか生れた時のような気分です」
「それはよかったですね」


「ずいぶん寝てましたか?」
「そうねえ ぐっすりと 何十年分もね」


 すると沢山の花びらがヒラヒラと舞い落ちてきてリウに声をかけました。
「リウさま 何かお願いごとがありますか?」


「何でもよろしいのですか?」桜
「ええ どうぞ 何でも叶えてあげます。言ってみて下さい」


「はい。 急な別れでしたので、もう一度戻ってみたいです」桜
「分かりました」桜


「では、花びらを集めて下さい」桜
「たくさん集ったら天使さまの手の平に乗せてね」桜


 リウとエンジェルとパティとラフィーネは花びらを集めました。


花びら


「天使さま これでいいですか」
「十分ですよ。じゃあ 後ろむいてて……」


 天使さまが指先で大きな円をぐるーと描くと
 花びらはその後を追いかけるように大きな円になりました。


「はーーい こっちむいていいよ」
「あ あれは」 遠くの方に懐かしい景色が見えます。


 うさぎー おーいし かのかわー
 子供の頃の思い出が残るあの山、あの木、あの野原♪


花のトンネル


「さあ あそこへ行きましょう」
「はい」


「あっ、 父に母、妹…… 私の妻や子供たち……」
「みんなに何も言わずに、遠くへ行ってしまって、ごめんな……」




 天使さまが言いました。


天使


「リウ、これからは天上から家族を見守ってあげなさい。
 危ない時は支えてあげることもできます。
 嬉しいときは共に喜び合うこともできます。
 登山からもどったお父さまには、足や腰を温めてあげたり
 肩や首がこったりしているお母さまには、もみほぐしてあげたりもできます。
 家族の皆さまの人生を、影ながらリウが支えてあげるんですよ」


「私はいつも家族と、ともにあるのですね。もう離れることはないのですね」

「そうですよ リウ
 今いるこの現実はあそこに見える家族一人一人の心の中なのです。
 何か感じますか?……」


「ええ 心の中に熱いものを感じます」
「それが 家族の愛です」


「姿が見える形で帰る事は出来ませんが
 いつも一緒にいて守ってあげることがリウの使命です。
 あなたは、もう遠くへ行くことはありません。
 家族の方から見るとリウは天上に輝いている星に見えます。
 天を見上げればいつでも会えます。
 輝いている星を見ていると、リウの顔に見えてくるはずです」


あの星のかなた


 あの星のかなたに…… リウがいる……
 天上に輝く……あの星のかなたに……♪


  お わ り